こんにちは。Android衛藤です。
2月6日にGoogle Japanで行われた"Google Design Sprint #2"に参加してきました。
ネクストからはデザイナー・エンジニア含めて3名での参加となります。
今回、初めての参加でしたが、非常に面白い内容でしたので、そちらの参加レポートとして紹介したいと思います。
Design Sprintについて
Design Sprintの概要
以下、Google Design Sprintのサイトからの引用です。
The sprint is a five-day process for answering critical business questions through design, prototyping, and testing ideas with customers. Developed at Google Ventures, it’s a “greatest hits” of business strategy, innovation, behavior science, design thinking, and more — packaged into a battle-tested process that any team can use.
Google VenturesというGoogleのベンチャー向け投資部門で開発されたもので、アイデアの設計からプロトタイプまでの落とし込みを、短期間で仕上げるためのワークショップのことです。
通常、Idea → Build → Launch → Learnと開発サイクルが回っていくところ、Design SprintではIdea → Leanと、ショートカットする事で超短期間でプロトタイプまでの落とし込みが可能になります。
今年、日本に上陸したBlue Bottle CoffeeのWebサイトもDesign Sprintによって生み出されたそうで、詳しくはこちらにありますが、この内容と同じようなことを今回行いました。
Design Sprintの手法とプロセス
対象となるユーザ像(ペルソナ)を一人に決め、そのユーザが求めているサービスについてひたすらアイデア出し→絞り込み、というSprintを繰り返していきます。
プロセスは大きく3つに分かれ、それに沿って作業を行っていくことでプロトタイプを完成させていきます。
Desing Sprintの3つのプロセス
1)理解と定義(Understand/Define): 対象ユーザー(ペルソナ)を理解し、求められているサービスを考える 、「ユーザー分析」を行います。
2)発散と決定(Diverge/Decide): ユーザー分析を元にサービスに必要な機能を洗い出し、そのうちユーザーに最も必要とされている機能を選択する「意思決定」を行います。
3)プロトタイプの作成と検証(Prototype/Validate): ユーザーに見せることができる UI のペーパーモックアップの「作成と検証」を行います。http://googledevjp.blogspot.jp/2014/11/design-sprint-for-android-wear.html
活動内容
通常は上述の通り5日間で仕上げるようなのですが(2日間というのもある)、今回はさらに短く3時間で全てのサイクルを回し、最終的にペーパーモックまで作成するというものを行いました。
対象のサービスとしては、Android Wearアプリです。
3−40人ほどのエンジニア・デザイナーが各社から集まっていましたが、最初にチームビルディングを行い5人でグループになったところで、実際にワークショップがスタートします。(エンジニア・デザイナー混在)
以下、実際の作業内容となりますが、個人ワーク→グループワークの繰り返しという流れになっています。各自間は個人ワークが5分程度、グループワークが10分程度、最終的なPrototypingが30分など、明確に時間を区切って進めていきます。出来る限り時間の延長は行わず、決められた時間内で終わらせることが大事です。
Understand(理解) / Define(定義)
架空のユーザー(ペルソナ)が記載されたシートが10枚程度配られ、まずはどんなユーザがいるかを理解します。
それぞれのシートには、下記のような情報が記されておりますが、かなりラフな情報しか記載されていません。
- User Photo
- ゴルフをしていたり、キャンプをしていたり様々なシーンで撮影されている
- Name, Age
- Story
- 何の仕事を行っているか
- 趣味は何なのか
- Next adventure
- 次に予定していること。どこに旅をする予定、とか
そして、最後がこのようになっています。
- Biggest needs (define as a team):
[Name] needs a way to xxxxxxxxxxxxxxxxxx
& wants the experience to be xxxxxxxxxxxxxxxxxx
because they value xxxxxxxxxxxxxxxxxx.
→この部分が一番重要で、そのユーザーが何を求め、どんな体験がしたいか、その理由として、どんな価値が見いだせるから という部分をチームで決めます。
まずは、ペルソナを一人に絞り、Biggest needsを考えるところからスタートします。
この考える部分ですが、かなり想像力を働かせる必要があります。というのも、限られた情報しかないため、自分なりにそのペルソナがどんな人なのかを勝手に仮定して人物像を作り出していかないとなかなかアイデアが出てきません。
Diverge(発散) / Decide(決定)
ユーザーとそのユーザーが求めているものが決まったら、今度は個人作業でアイデアを出します。出せるだけひたすら、時間内でポスト・イットに書いていきます。(1アイデア、1ポスト・イット)
最初のうちは結構出るのですが、時間が経つにつれペンが止まっていきます。しかし、この部分は「質より量」が大切。どんな些細なことでもよいので思いつく限りを記載するのが鉄則だそうです。
制限時間ギリギリまでアイデアを出した後は、チームでの作業に切り替わります。
出てきたアイデア、一つ一つ吟味しホワイトボードに貼付けていきます。
その時に、下記のように技術的に難しいか、ユーザにとっての価値は高いか、によって貼付ける場所を選んでいきます。
当日の様子↓
作業が完了した段階で、絞り込みに入ります。
ここでの絞り込みの方法は、投票を行うというもので、1人2案やりたいものに投票を行い、投票結果の上位2案で決選投票。最終的に1つの案に絞り込みます。
Prototype(プロトタイプ) / Validate(検証)
8つのシーンを想像する
どの機能を作るかが決定されれば、また個人作業に移ります。
やることは、8個のシーンを考えるということです。
今回は、A4の白紙を8等分に折り、それぞれの1スペースにユーザーがどんなシーンでその機能を使っているかを書いていきます。
ここでは、文字ではなく実際にイラストで想像したシーンを書きました。
シーンを1つに絞る
個人作業が完了すると、チームでの作業に変わるのですが、ここでも一つに絞り込みます。チームが5人の場合、1人8シーン × 5人分 = 40シーンが作り出されるのですが、その中から、本当に実現したい1シーンのみに絞ります。
ペーパーモック:個人作業
シーンが決定すると、次は個人で実際にペーパーモックを作成します。
今回の場合はAndroid Wearが対象なので、Wearの画面に見立てた四角い枠に、どのような画面遷移になるかをこれもイラストで描いていきます。
Android Wearで大事な事は、
- 必要最低限な情報
- シンプルなアクション(0 ~ 1アクションが理想)
- 自動起動(ユーザーが自ら起動するのではない)
- 入力インターフェースは音声かタップのみ
といったようなことを重視してUIを作成します。
ペーパーモック:チーム作業
個人でのペーパーモックが出そろったら、そうです、どれか一つの案に絞ります。
その案に対して、チームで再討論しUIモックを清書して完了となります。
これまでの一連の流れを追っていくと分かりますが、アイデアの選択と集中を繰り返し、最終的に1つに絞っていくということが重要そうです。(ついでだからこの案も・・・というのは基本的にはありません)
1分間プレゼン
最後に、1チーム1分間で出来上がったモックを発表していきます。 通常の5日間のときは、ここで検証が入るようなのですが今回はプレゼンのみ。 数時間の作業でしたが、どのチームも洗練された機能ばかり出ていました。
終わりに
振り返って
3時間という極めて少ない時間の中、内容は非常に濃いものでした。
何かサービスを考える際、長時間終わらないブレストをやって、最初の目的とズレた結論が出る、ということは往々にしてありますが、Design Sprintを使うと短時間で結果が出せるということが、この体験をもって分かりました。
スタートアップ向きのワークショップとはいえ、一般的な企業でも役に立つ手法だと思います。ちなみに、人数はやはり5人(奇数)がいいらしく、それ以上増える場合はチーム分割を行うのがよいとのこと。
今回は数時間なのでペーパーモックまででしたが、5日間のSprintでは、Photoshop等を使って本格的なプロトタイプまで仕上げるようです。機会があれば5日間フルで参加してみたいと感じました。
一緒に参加したエンジニア・デザイナーの気づき
最後に、私と一緒に参加したエンジニアとデザイナーの感想もこちらで紹介させて頂きます。
デザイナーの気づき
【アイデアの出し方】 アイデアソンの手法として、自分の中で「できるできない」のフィルターを掛けるのはNGで、沢山アイデアをだして、そこから実現性を考慮して削ぎとっていったほうが効率的であり、その段階で他人のアイデアとぶつけあったりくっついたりして良いアイデアに昇華、新しいアイデアが生まれるので大事。
【意思共有に向いてる】 「誰のための何のサービスなのか」を常に意識しながら、頭から抜ける前に短時間で考えてアウトプット(ペーパープロト)まで持っていくので意思共有にも有効な手法かもしれない。
エンジニアの気づき
【質より量】 いいものを作るために短時間で様々な意見を出し合い、選びうる選択肢を増やせるだけ増やしていたのが意外だった。もちろんデザインスプリントの趣旨である1つにしぼる。利用イメージ(1シーン)にあうものを選ぶという制約があるからだろうなと思った。
【使い方をイメージさせる】 Wearのような細かいインターフェースで、色々なことをやってもユーザには伝わらない。であれば、あえてそれを押し出さずWearがあるとどういった時に便利になるよといったイメージをユーザに持たせる方が大事。さらに、そこで簡単な操作で色々できるのが理想。
【カテゴリに応じて答えが違う】 アプリのカテゴリに応じて、最適なインターフェース、利用シーンといったものが違うので、これぞ Wear というのはないのではないかと思った。Wearable である意味というのは日常の1シーンにあるといいことがあるよ、といったものなのかもしれない。
【Googleさんも悩んでいる】 Googleの中でもDesign Sprintなどで試行錯誤して開発を行っている。Google Glassなどもこういった中で作られていったようです。