はじめに
LIFULLにて基盤グループのマネジメントをしている磯野です。
2025年8月28日に開催された「Amazon Q Developer Meetup #2 Amazon Q Developer を業務で活用した成果共有と最新情報 Update」に参加し、LIFULLでの活用事例について発表させていただきました。
当日は株式会社マイナビ様の事例発表もあり、他社での活用状況を知ることで多くの共通点や共感できる部分がありました。また、懇親会では各社の担当者の方々と直接お話しでき、様々な活用方法や課題について情報交換することができ、今後更にいろいろ試せそうで非常に有意義な時間を過ごさせていただきました。
本記事ではイベントで発表した内容をもとに、Amazon Q Developerの導入から社内展開、そして多職種での活用事例について、LIFULLでの実践例をご紹介します。エンジニアだけでなく、サービス企画やデザイナーまで幅広い職種で活用が広がっている現状と、その具体的な事例をお伝えします。
導入から拡大まで
導入のきっかけ
昨年10月から今の部門のマネジメントを任されており既存の課題である対応スピードの改善を主要なミッションの1つとして持っています。 とくに、LIFULL HOME'Sの主要サービスのAWSアカウントやそこで動くインフラの管理をしている関係で、自動化やIaCの推進をしてくことが急務だったため、AIエージェントを活用していきたいと考えていました。
具体的には以下のようなことを意識して選定しています
- ほとんどコードを書かない基盤グループでCDKでの開発を推進する
- CLIでの作業が基盤グループの業務にマッチしていた
- AWSコンソールや認証への統合など、AWS環境との親和性が高い
利用していく中で、開発だけでなく調査や分析もLinuxコマンドを活用しながら処理でき、想像以上に便利だったため、「これはイケる!」という手応えを感じました。
拡大戦略
その手ごたえを受けて、もっと広く活用してもらえるのではないかと考えた結果、 Amazon Q Developerの社内展開を以下の2つのアプローチで進めました:
1. 草の根で広げる
- 近くのエンジニア部門のマネージャ、リードエンジニアに自分の使っているところを見せて使ってもらう
- 乗り換えを受け入れられるように予算・登録・利用方法を整備する
2. 波に乗る
- Qのアップデートを積極的に取り入れる
- MCP対応 / Claude Sonnet 4対応
- 企画の検証の1つとして使ってもらう
この草の根 + 波に乗る戦略により、利用者が着実に拡大していきました。 特にマネジメント層が前向きに導入を進めてくれた部門では部門の総会などで活用事例を共有してくれるなど周りの後押しにも支えられています。
また、Q自体のアップデートのタイミングも本当に素晴らしく、ほしいときに欲しい機能がリリースされてくれたため強い後押しになりました。
- 導入検証開始 → Q CLIがmcpに対応
- エンジニア全体に拡大開始 → Q CLIがClaude Sonnet 4に対応
- サービス企画の導入検証開始 → 上記2つがIDE版に対応
直近ではエージェントの作成機能が追加されるなどまだまだ追加されるものは多く、今後にもとても期待しています。
話が少しそれてしまいますが、個人的に最近のアップデートで最高だったものはログインのawscliへの統合です。 これによりQへのログインはせずにAWSにログインするだけで利用できるため、朝のログイン作業が劇的に楽になりました。
# 環境変数を設定 export AMAZON_Q_SIGV4=1 export AWS_PROFILE=[プロファイル] # AWS SSOでログイン aws sso login # Q Chatを開始 q chat
現在の利用者数
現在ではエンジニアを中心にサービス企画やデザイナーなどに浸透し、その範囲においては9割以上のメンバーが登録済みの状態です。
ここから先は当日発表した事例についての説明です。 当日はスライド自動作成はLIFULL HOME'Sの流通領域のエンジニアチームにてマネジメントをしている渡邉から、サービス企画・PMでの活用事例はパーソナライズやレコメンド機能などのPMをしている井上から発表させていただきました。本記事は私が取りまとめて執筆しています。
事例紹介① スライド作成自動化
課題:スライド作成の効率化
管理職になってスライド作成機会が激増する中で、以下の課題を抱えていました:
- デザインに自信がない
- 細かい調整が苦手
- 時間がかかりすぎる
従来は4時間かけてPowerPointと睨めっこしていたのが、Amazon Q Developerを使うことで数分で完成するようになりました。
解決策:HTMLスライドの生成
最初はpptxをAIに作らせようと考えましたが、「伝える」上でフォーマットにこだわる必要はないと気づき、Amazon Q DeveloperにHTMLでスライドを生成してもらうアプローチを採用しました。
HTMLスライドのメリット
- コードブロック対応: スクローラブルなデザイン、コピー機能付き
- Git管理: バージョニングが容易、チーム共有も簡単
- 高い自由度: デザインや画面幅の制約が少ない、レスポンシブ対応
- 統一感: GUIDELINE.mdで自動適用、再現性のあるデザイン
自動化ワークフロー
GUIDELINE.mdで定義された3ステップで自動化を実現:
- アウトライン生成: README内容を読み解いてOUTLINE.md作成
- スライド生成: アウトラインを元にHTMLスライド作成
- ファイル出力: 絶対パスで表示、ブラウザ確認可能
実際に今回のスライドも5分程度で生成することができています。 例えば、"自動化ワークフロー"の実際の生成されたページは以下のようになっています。 自分でパワーポイントでやってもできる自信はないです。

HTMLでのスライドの為ここに貼れないのが残念ではありますが、スライド作成についての詳細は以下を是非ご覧ください
事例紹介② サービス企画・PMでの活用
1. プロトタイプ作成
DeNAさんが企画書にプロトタイプを必須化というニュースにインスパイアされ、早速トライしたところ、1時間程度でかなり良いプロトタイプが完成しました。
社内への影響
「企画でもプロトタイプが作れる!」というインパクトから利用者が急増し、以下の効果が生まれました:
- プロトタイプを作成するプロジェクトが増加中
- 従来の企画書・仕様書に代わる新しいコミュニケーション手段として定着
- デザイナー・エンジニアとのコミュニケーションが格段にスムーズに
「動くもの」で認識合わせを行うことで、認識齟齬を大幅削減できています。
2. 施策のアイデア出し
ChatGPTなどでもアイデア出しは可能ですが、コーディングエージェントのメリットはコンテキストの活用です。
設定するコンテキスト
- プロダクトの概要・ターゲットユーザー・仕様など
- 技術的制約、予算制約、時間制約などの制約条件(特に重要)
制約条件がないと実現性度外視のアイデアばかりが出てくるため、制約条件の提供がアイデア精度向上の鍵となります。
制約条件ドキュメントの育成プロセス
実践的な3ステップで制約条件ドキュメントを育成:
- まずAmazon Q Developerにアイデアをたくさん出してもらう
- 「◯◯という理由でできない」を逐一伝えていく
- 「今回伝えた制約条件をドキュメントにまとめておいて」
制約条件ドキュメントを育てることで、かなり精度の高い(ハズレの少ない)アイデア出しができています。
3. 効果測定レポート自動化
Before vs After
従来の作業プロセス(半日〜1日の手作業) - データの抽出 - 分析・考察の作成 - ネクストアクションの検討 - 他の人に読みやすく整理
Amazon Q Developerで効率化(1〜2時間で完結) - データをテキストで貼り付け - 自動で分析・考察を生成 - 次の施策案も自動提案 - MCP経由で直接投稿
結果として、80%の作業時間削減を実現しています。
品質向上への取り組み
初回から完璧な結果は得られないため、以下の問題に対処:
- 問題1: 事実と推測が混在、推測を事実かのように断言
- 問題2: 根拠の低い、説得力のない仮説を立ててくる
- 問題3: ネクストアクション(施策)が10個以上出てきて絞り込めない
逐一修正指示を行い、その内容をルールとして蓄積し、次回以降の効率化につなげています。
その他にも企画業務全般で活用が広がっています。さらなる生産性向上に向けて、企画職全体で取り組みが進んでいます。
その他の活用事例
以上が主な活用事例ですが、他にも社内では活用していくにあたっていろいろと進めていますので簡単な事例として紹介させてもらいます。 おそらく各担当が今後ブログなどで記事を作成してくれると思います。
社内MCPサーバー
社内システムとの連携を実現するMCPサーバーを構築し、Amazon Q Developerから直接社内システムにアクセスできる環境を整備しています。 インストール型ではなくサーバーで稼働させることで職種の隔てなく簡単に導入できるようになっています。
具体的なシステムとしては Jira/Confluence, データベースのテーブル定義情報などです。
Qランキング
利用状況の可視化と競争要素の導入により、利用促進を図っています。 ランキング出力部分もAmazon Q Developerに指示して作成してもらっているので、こういった活用により自分のランキングもかなり上位になっています。 (TOP3には入れるんですが1位にはなれないのでまだまだ活用が足りないようです)

ローカルMCP
通知機能
- タスク完了の通知をMCP経由でOSの通知に送信
- 通知でも弱いのでOSの音声再生に送信 ※Qの処理時間が長くなると忘れてて20分後に通知がくる場合があって、MTG始まってたりするとざわつくので最近止めてます
社内AIサービスとの連携
- 使い道は模索中
- 将来的な拡張性を見込んだ基盤構築
開発者体験の向上を追求しています。
プロジェクト専用エージェント設定(検証段階)
最近追加されたエージェント機能により、開発だけでなく、調査や運用でも活躍できる特化エージェントを設定できます。手順書があれば細かいコードを書かなくてもエージェントが助けてくれる環境を構築中です。 以下は最近作ってみた「静的サイトをS3+CloudFrontで公開するためのエージェント」の例です。
エージェント用設定ファイル
基盤グループで稀に発生する静的サイトの公開をエージェントでできるようにしています。 もともとはエージェント関係なくQ用にコンテキストを作成していたので、エージェントはこのファイルを読み込む設定をしただけで数分で完成しています。

定義ファイルを簡単に記載しつつ、詳細なコンテキストは別ファイルとして渡しています。
起動方法
設定ファイルに指定した名前を指定してプロジェクト内で起動します。

実際の動作例
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このように手順書やAI用のコンテキストがあれば、簡単に特定機能に特化したエージェントを作成できるので可能性は無限大だと思います。 事例1で紹介したプレゼンテーション作成のエージェントも今後はリポジトリ上でエージェントとして管理していけるように調整中です。
デザイナーでの活用(検証段階)
まだこれからの段階ですがデザイナーでもPMでの活用をうけて検証を開始しています。 それによりAIを活用し素早いユーザー価値提供を目指しています。
プロトタイピング
- HTML/CSSでプロトタイプ作成
- 簡単な動作確認
- FigmaとのMCP連携
サービス改善
- 企画からデザインのガイドライン化
- 企画から直接HTMLへ反映
- デザインプロセスの省力化
まとめ
Amazon Q Developerは、コーディングだけではなく、設計からタスク定義、そしてエンジニア以外の生産性を革新的に向上させるプラットフォームとして機能しています。
LIFULLでは、エンジニアから始まった活用が、サービス企画、デザイナーまで広がり、各職種の特性に合わせた活用方法を見つけることで、組織全体の生産性向上を実現しています。
今後もさらなる活用を目指し、新しい可能性を探求していきます。
※本記事はスライド用HTMLを出力する前のmarkdownファイルをもとにQ CLIでブログ用に出力し手動で整形して提供しています。
最後に、LIFULL ではともに成長していける仲間を募集しています。よろしければこちらのページもご覧ください。