こんにちは。プロダクトエンジニアリング部でエンジニアリングマネージャーをやっている野澤です。現在LIFULLのプロダクトエンジニアリング部では個人のスキルを高めることを目標の一つとして取り組んでいます。
この記事を読んでいる皆さんもご承知のとおり日々技術は進歩しており、追いついていくのも大変です。当たり前のことかもしれませんが、個人のキャリアのためにも、企業間の激しい競争に負けないためにも、また企業の理念を実現するためにもエンジニアには高い技術力が要求されます。
もちろん自分で勉強して、新しい仕事にも挑戦して、勝手に成長していくエンジニアもいますが、全員が全員そういうわけではないと思います。
前職でも、なかなかスキルアップできないメンバーをどうやって成長させるか私自身思い悩んだ経験があります。例えば、スキルアップ目標を掲げても行動しない、忙しくて時間が取れない、気が向かない、何が嬉しいのか分からない、かつては自己研鑽していたがやらなくなってしまった、など。
こういったことは皆さんの周りでもありえることではないでしょうか。
私が所属するプロダクトエンジニアリング部5ユニットでも、自己研鑽についていろいろ取り組んでいます。多少うまくいったところもあるため、少しご紹介できればと思います。
やったことと結果のサマリー
まず、どんなことをやったのかとその結果どうなったのかを簡単にご紹介します。
やったこと
- なんで自己研鑽が大事なのかディスカッション
- 自分が行ったInput/Outputの簡単なログを作る
- slackで書籍や勉強会の情報共有チャンネルを作る
- 発表機会(LT)を増やす
※後ほど詳しく説明します
結果
4月から3ヶ月間、上記の取り組みをしてみての感想をアンケート形式でメンバーに聞いてみました。
Input
- Inputの量が増えた(100%)
- 以前よりも書籍を読むようになった(75%)
- Inputに対してのアンテナの感度が高くなった(62%)
- 以前よりも外部の勉強会やセミナーに参加するようになった(50%)
- Inputが増えて楽しいと感じるようになった(87.5%)
Output
- Outputの量が増えた(25%)
- 以前よりもブログや勉強会、LTでの発表内容が良くなった(50%)
- 以前よりも仕事における工夫の幅が広がった(38%)
Outputには課題はあるものの、Inputにははっきりとした改善の兆候が見られます。では取り組んだことをご紹介できればと思います。
やったこと
1. なんで自己研鑽が大事なのかディスカッション
まず「そもそもなんで自己研鑽するんだっけ?」というテーマでディスカッションしてもらいました。
チームの中には「今まであまり考えたことがなかった」という人もいれば、「改めて考えるとなんでだっけ」という人もいました。上から「スキルアップしてください」というのは簡単ですが、まずは自分の頭で「なんでスキルアップしなきゃいけないのか」を考えてもらう必要があります。またチームで話し合うことでフラットに他人の意見を聞くことができるので、「そういう考え方もあるのね」と思考の幅を広げることができます。
例えば技術力が向上すると給料があがる、仕事が選べる、転職のチャンスが広がるといった個人のキャリアに関することもあれば、価値提供のスピードを上げられる、理念の実現に貢献できるといった会社目線での意見もありました。また率直に「技術力が上がるといろんなことができるようになって単純に楽しい」といった意見もありました。
そのあと、自己研鑽ができている理想の状態についても考えてもらいました。理想の状態とは、しっかり自己研鑽ができている人はどういう行動をしているのか、結果としてその人はどういう状態になっているのかについてです。
これもチームのメンバーと話し合うことで、いろんなあり方・やり方に気づくことができます。「理想の」というところもポイントです。理想的な状況を想像できるようになると、なれるかもしれない自分の可能性に気づくことができます。例えばOSSのコミッターになっているとか、大きなイベントで登壇している、社外からも信頼されていて相談されるなどです。
その後、理想に対する自分たちの現状についても議論もしてもらいました。現実はなかなか理想通りにはいきません。仕事でスキルアップするのが一番効果的ですが、毎回スキルアップにつながる仕事があるとは限らないよね、といった声もありました。
ここで理想と現実のギャップを認識してもらいます。そのことによって、じゃあどんなことができるのか?どうやって変えていくのか?ということをチームが自然に考え始めます。
その上でユニットとして次のようなことを取り組むことにしました。
2. 自分が行ったInput/Outputの簡単なログを作る
自分がどんな本を読んでどんなことを感じたり何を学んだかというのは、サマリーやブックレビューを書かない限り忘れてしまうことが多いのではないでしょうか。参加したセミナーの感想なども同様です。そこで、簡単な表形式でインプットしたことをログとして残すような取り組みをしてみました。
ログにインプットしたことが蓄積されていくと自身の成長も感じるし、達成感もあって楽しくなってくるようです。アンケートでもそういった回答をした方が多かったです。楽しくなると継続のハードルが少し下がり、自己学習が習慣化されていきます。
また、時々このログを振り返ってみると、どんなことを知りたくてどんなジャンルの本を読み続けていたのか、この時期は何に関心があって、どんなセミナーに参加していたのかを思い出すことができます。その上で自分が何をどこまで理解することができて、何に関心があるのか、あるいは何についてはたいして興味を持てなかったのかが分かるようになります。つまり自分の好みや強みの傾向を分析できるようになります。そのことによって、今後の成長の方向性を考えたりすることができるようにもなります。
また、1on1のときなどに一緒にこのログを見ることで、「この本読んだんだね。どうだった?」みたいな会話が生まれたり、「このセミナー参加してたんだね。私は○○についての話が面白いと思ったけど、どう思った?」みたいな会話が生まれ、理解が広がっていきます。お互いおすすめの本を紹介しあったりすることもあります。
またアウトプットしたことも同様にログをつけてもらうようにしました。この取り組みを始めたのが4月ですので、まだそんなにアウトプットが書けていない人もいます。インプットはできてもアウトプットをするまでの余裕が無いとか、どんなふうにアウトプットしたらよいか分からないと考えるメンバーが多いようです。このとおりアウトプットにはまだ少し課題が残ります。
ただ私自身は普段の業務でもインプットした知識が以外にも活用できていることに気づいたり、せっかくなので業務でアウトプットする機会を作ろうとしていることにも気づきました。アウトプットすることによって、周りからFBをもらって更に理解が深まるという体験もしています。
またアウトプットの蓄積がされてくると、インプットとアウトプットの関係が見えてきたり(5月に読んだ本の知識が6月の業務で役になっているなど)、インプットとアウトプットが循環して、より学びが深くなるといったことが起こります。こうなってくると、自己研鑽がより楽しくなるのではと思います。
3. slackで書籍や勉強会の情報共有チャンネルを作る
私の部署ではslackを使っているのですが、とあるメンバーがおすすめの書籍や勉強会の情報を共有するチャンネルを作ってくれました。それによって、面白そうな新刊の情報や、イベントやセミナーの情報が活発に交換されるようになりました。一緒に同じイベントに参加して感想を話し合ったりというようなことも起こっています。AmazonのKindle本セールなど、お得な情報も共有されて役に立ちます。
一人だとなかなか自己研鑽するのが難しい人でも、他の人と得た知識を共有しあったり、コミュニケーションが生まれると楽しさを感じることができて持続的にインプットすることができるかもしれません。
4. 発表機会(LT)を増やす
また月に1回、インプットしたものをアウトプットする機会としてLTの時間を作ってみました。
発表時間は10分と短く、そこまで資料の完成度や準備の時間も求めないことにして、リラックスして発表できることを目指しています。実際にフィードバックをもらえることもモチベーションになったり、LTで話す内容を意識しながらインプットする方もいるようです。
その他の取り組み
以前から行っていた取り組みですが、社内勉強会をメンバーたちが自主的に開催しています。気になる本の輪読会やとある技術についてのハンズオンのような勉強会を、興味のある人同士で隔週くらいで活動しているようです。
また業績評価にはしないものの、アウトプットの目標、例えばQiitaや会社の公式技術ブログ(今ご覧になっているブログです)への投稿数や社内でのLT・発表の回数を設定して取り組んだりもしています。
今後の展望と課題
アンケートや普段のメンバーの動きを見ている限り、このような取り組みを行ったことでメンバーのInput/Outputに対する意識はかなり変わったように思います。私としては以下の2つの理由があったと思っています。
- 自己研鑽を見える化することで、自分がどれだけ頑張ったか分かるようになり達成感を得られるようになったこと
- 自己研鑽をその人だけの孤独な取り組みにせず、みんなで取り組めるようにしたこと
ご参考になれば幸いです。
今後はInput/Outputのログを全社公開し、お互いにどんなことを勉強しているのかを知れるようにすることで、おすすめの本やセミナー、資格などの情報交換を活発にしたり、理解を深め合うような状況を促進していきたいと考えています。
LIFULLでは共に成長できるような仲間を募っています。 よろしければこちらのページもご覧ください。