こんにちは。LIFULL Tech Vietnam(以下、LFTV)CEOの加藤です。
2016年よりLIFULLへ中途入社し、主にLIFULL HOME'S 注文住宅領域のエンジニアチームのマネジメントを経験したのち、2023年10月よりLFTVのCEOへ就任致しました。 就任し約半年が経過しましたが、今回はこれからのLFTVが目指す未来について紹介したいと思います。
LFTVについて
まずLFTVについてですが、ベトナムホーチミンに拠点を構えるLIFULLグループの機能子会社です。
主にアプリケーション開発業務を担い、LFTVで担う業務の大部分をLIFULL HOME'Sのプロダクト開発が占めています。 従業員は2024年3月時点にて全社で約90名程度在籍しています。
2017年に設立し、これまで右肩上がりで規模を拡大してきましたが、次なる成長を見据え私が就任した今期よりLFTVの第二フェーズと位置付け、新たな戦略のもと走り始めることとなりました。
オフショア開発からグローバル開発へ
これまでもLFTVはLIFULL HOME'Sを中心とするLIFULL本社のプロダクト開発を多く担ってきましたが、その関係はいわゆる「オフショア開発」としての関わりでした。 単純に海外で開発することをオフショア開発と呼ぶこともありますが、ここではソフトウェアやシステム開発を海外企業へ「委託」することとして表現します。
受託開発としての関わりのもと、LIFULL本社をクライアントとして認識し、開発してできた成果物をリリースすることを納品として表現していました。 また、役割も分断されていることが多く、日本側で設計までの上流工程を担い、下流工程をベトナム側が担うという体制が主流でした。
こうしたオフショア開発としての体制のもと順調に規模を拡大してきましたが、新たなビジョンを掲げ転換期を迎えることとなりました。
LFTV設立の目的
新たなビジョンの話の前にLFTV設立の目的についてお話したいと思います。
LFTV設立の大目的は「中長期的な事業成長のためのLIFULLグループ全体の開発リソース確保であり、"優秀な人材を確保・増員し、生産性を上げながらコスト削減を実現する"こと」です。
つまりは単にコスト削減のため低単価な海外へ開発業務を外注するのではなく、LIFULLグループの一員として優秀なベトナム国内の人材を確保し、さらなる事業成長につなげることが目的となります。
この目的はLFTV設立以降一貫して変わっておらず、サービス規模が拡大する一方、日本国内のIT人材不足は今後も続く見込みであることから、ベトナム国内の優秀な人材をLIFULLグループの一員として迎えることの重要性はますます高まっています。 引用元:経済産業省 IT人材需給に関する調査
グローバル開発の実現
2023年3月には第二の海外開発拠点であるLIFULL Tech Malaysia(以下、LFTM)が設立し、LIFULLグループ全体として海外との協力開発の推進がさらに加速することとなります。 このような背景と目的のもと、LIFULLグループ全体として新たに「グローバル開発構想」が掲げられました。
このグローバル開発構想の大きなポイントの一つは日本・ベトナム・マレーシアの各開発拠点間の垣根をなくすことにあります。
今までLIFULL本社とLFTVはシステム開発の委託先として関係性を築いてきましたが、これからは「同じチームの一員」として新たな関係性を築くことを目指していきます。 また、携わる領域や役割においてもLIFULL本社とLFTVとで切り分けがされ、チームもそれぞれ分断されているケースが多く存在していましたが、今後は所属に捉われない体制構築も目指していきます。
これはたとえば、各国跨いで1つのチームを構成することや、必ずしもLIFULL本社のメンバーがリーダーや上流工程を担うとは限らないといったことなどを想定し、各開発拠点のメンバーそれぞれの特性を活かした役割やチーム編成を行うことをイメージしています。
このようなLIFULLグループ全体のビジョンを実現すべく、LFTVとしても新たな戦略を打ち立て走り出すこととなります。
LFTVエンジニアのあり方
ビジョンを実現する上で、「どのようにあるべきか」を明確にすることはとても重要です。 そこで私はLFTVエンジニアの「あり方」として以下のように定義しました。
一人一人がLIFULLグループのプロダクトチームの一員として、プロダクト開発にコミットしている。
ここで重要なポイントは「プロダクトチームの一員」であるという点です。
LIFULLは2021年よりプロダクト開発の方針としてプロダクトマネジメントを導入しました。 corp.lifull.com
プロダクトマネジメントの大枠としては、プロダクトマネージャー、テックリード、プロダクトデザイナーを中心として構成されるプロダクトチームが、それぞれの専門性を活かし三位一体で連携し、ビジョン実現や成果の創出といったアウトカムを重視しプロダクト開発を行うといったものです。
グローバル開発というビジョンを実現するためには、このプロダクトマネジメントの考えに基づき、プロダクトチームの一員としての振る舞いが重要であると考えます。
そこでさらに深掘りをし、このプロダクトチームの一員としての振る舞いを実現するために必要な意識を「目的」「チーム」「エンジニア」の3つの観点より定義しました。
目的に対する意識:「アウトプット志向」から「アウトカム志向」へ
LIFULLでプロダクトマネジメントを導入するにあたって参考とした書籍「INSPIRED」および「EMPOWERED」では次のように言われています。
有名なベンチャーキャピタリストのジョン・ドーアは、次のように好んで説明している。「私たちが求めているのは伝道師のチームだ。傭兵のチームではない」
ここでいう伝道師のチームが目指すべきプロダクトチームを指します。 伝道師のチームではプロダクトビジョン、原則、戦略が共有され、チーム全員がプロダクトに対して深い理解を持ち、ビジョン実現に向けて情熱を持って取り組むことが求められます。 また、伝道師のチーム(= プロダクトチーム)となるためには従来の機能開発チームから脱却することが必要であると表現されています。
- 機能開発チーム:従来型組織で、個々のチームのアウトプット重視で動いているようなチーム
- プロダクトチーム:一流テクノロジー企業にあるようなアウトカム重視のチーム
今までのプロダクト開発においては、決められた機能を仕様通り正しく期日を守って開発することに最もフォーカスして取り組んできました。 この先目指すべきプロダクトチームの一員となるためには、これらの目的をしっかり遂行することに加え、その先にあるアウトカムにも意識を向けることが求められます。
つまりは、事業の推進やプロダクトビジョンの実現を見据え、与えられたミッションを達成するためにプロダクト開発を行う意識がこれからは重要となるのです。
チームとしての意識:オフショアからの脱却
これからはLFTVエンジニアがLIFULL本社や日本人エンジニアと区別された「オフショアメンバー」ではなく、同じプロダクトチームの一員であるという意識が重要となります。 このような意識を醸成すべく、LIFULLグループ全体として「オフショア」という言葉を使わないことを決めました。
オフショアという言葉には、前述の通り業務の委託先という関係性を想起させるニュアンスを持つことがあります。 このような言葉の持つイメージがお互いの関係性を作り上げ、目指すべきチームの形を作り上げる上での障壁となると考えました。
また、国内では現在、東京本社のほかに札幌と福岡に開発拠点が存在します。 札幌、福岡の開発拠点に所属するエンジニアメンバーも本社エンジニアとともにプロダクト開発を行っていますが、それぞれが同じプロダクトチームの一員であるということに誰も違和感を覚えるメンバーは存在しません。 これはプロダクトチームの形成において、物理的な距離や所属先の拠点ではなく、お互いの意識や関わり方が重要であるということを表していると思います。
これらより、LFTVも「オフショア先」ではなく、札幌、福岡と同様に海外に拠点を置く「開発拠点」として捉え、チームメンバー双方の意識も同じプロダクトを開発する同志として変えていくこととなります。
エンジニアとしての意識:サービスを実現するエンジニアへ
これから目指すLFTVのエンジニア像として以下のように定義しました。
テクノロジーを駆使してプロダクトやサービスを実現するエンジニアとなる。
システムを開発するという手段を目的としてとらえるのではなく、「目指すべきサービスを実現するという目的を達成するためにテクノロジーという手段を用いる」という思いがこのエンジニア像には込められています。
このような意識を持つことで、エンジニアとしての役割や活躍の場は今まで以上に広がります。 例を挙げると、以下のような場面でもその役割を担うことが考えられます。
- アイデアに対し開発実現性の判断を行う
- アイデアを実現するための最適な手段を検討する
- システム的なリスクや懸念事項への判断、対処を行う
このようにシステムの実開発を行うというのはエンジニアの役割の一部であり、プロダクト開発の活動全体に活躍の場があることが分かると思います。 大事なことはプロダクトチームの一員としてエンジニアリングという専門性を活かし、プロダクトの成長やサービスの実現を果たすという意識であると考えます。
「あり方」を実現する「なり方」
ここまでグローバル開発というビジョンを実現する上でのLFTVエンジニアの「あり方」について紹介してきましたが、最後にその「なり方」について紹介します。
あり方を実現する要素を分解して考えた際、大きく4つの取り組みが重要であることにたどり着きました。
本社・開発拠点間の連携強化
グローバル開発を実現する上で「意識」と「言語」の壁を超えることは重要な要素であると考えます。 そのため、まずはこの2つの壁を超えることを中心に本社および開発拠点間の連携強化を図ります。
意識の壁
意識の壁を超えるための手段としては主に2つのアプローチにて実行しています。
- ビジョンシェアリングなどを通じたトップダウンでの発信
- 各国の文化やイベント、知識などの情報発信
1つ目のトップダウンでの発信は、私自らがCEOの言葉として目指すべきビジョンや思いなどを継続して伝え続けることで、社員全員が同じ方向へ意識を向けることを期待しています。
2つ目の情報発信では、各国の情報に触れる機会を増やすことでお互いを理解し、身近な存在へと近付けることで垣根をなくすことを狙いとしています。
言語の壁
異なる母国語を持つメンバーで仕事を行う場合、言語の問題は避けては通れない課題かと思います。 我々も日本語、ベトナム語、英語を母国語とするメンバーで協業し、プロダクト開発を行うことを目指しているため、この課題に向き合い解決することはとても大きな意味を持ちます。
この言語の壁を超えるべく、チームの状況に合わせ英語でのトライアルやツールの活用など試行錯誤しながら取り組んでいます。
具体的な取り組みについては以下の記事で詳しく紹介しているため、ぜひご覧ください。 www.lifull.blog
エンジニア育成強化
従来の関わり方とこれから目指すべき関わり方を比較した際、LFTVエンジニアが担う領域やエンジニアとして求められる振る舞いが拡大することとなります。 例に挙げると今までアプリケーションの機能実装が主な役割であったものが、インフラやデータストア、セキュリティなど担当する技術領域の幅が広がります。 また、開発工程だけでなくプロダクト開発における活動全体において、専門性を発揮しながらほかのメンバーと密に連携することが求められるのです。
これらの要求に対処し、理想的なエンジニアとしてのあり方を実現するためには個々のエンジニアスキルを向上させることは必要不可欠です。 これらを実行するにあたり、まずはLFTVエンジニアとして身につけるべきスキルの方向性をLIFULLグループ全体と統一させるところから始めました。
方向性をそろえ、そこに向けて技術レベルを上げていくことで、LIFULLグループのプロダクト開発に必要な技術力を身につけたエンジニアへと成長することを目指しています。
ミドル層強化
エンジニア育成を行う上で、その体制を構築することも重要な要素のひとつかと思います。 その際、鍵となるのは優秀なミドルマネージャーの存在であると考えます。
今後エンジニア育成をより拡大していくためには、そのドライバーとなるミドルマネジメントが大きな役割を担います。
この考えに基づき、マネジメント教育を強化し、マネジメント力の向上と次世代のミドルマネージャーの創出を目指しています。
制度・環境整備
これらの取り組みを実行するためには仕組み化がとても重要です。 その中でも会社全体としてみた際、社内の制度や環境が戦略と整合し噛み合っている状態がとても重要であると考えます。
この考えに基づき、必要に応じて戦略に合わせた制度の見直しや環境の整備を継続的に実施します。 以下で紹介するのはこれらに関する取り組みの一部です。
組織構造の明確化
現在のLFTVでは組織構造を細部まで示し社内へ公開しているものがなく、社員による認識もあいまいなものとなっていました。
前述した通り、エンジニア育成を行う上では体制が重要となります。 そのため、あらためて組織構造を明確化し組織図に表すことで、所属する組織や組織の階層、上司・部下、組織やポジションによる役割等を明確に表現することとしました。
組織文化の醸成
本社・開発拠点を跨ぐプロダクトチームとして働くためには、同じ価値観を共有し、同じ行動規範によって判断することが重要であると考えます。
LIFULLグループでは社是の「利他主義」や経営理念を始めとし、日々の行動規範を定めたガイドラインなど共通して持つべき価値観が定められています。
これらの重要性をあらためて説き、組織の文化として定着させることがこれからのLFTVにはますます必要となると考えます。
最後に
ここまでLFTVの目指す未来について紹介させていただきましたが、LIFULL、LFTV、LFTMでは一緒に働く仲間を募集しています。
LFTVでは日本とは異なる文化や価値観に触れ、日々刺激を受けながら成長する機会に溢れています。 海外のメンバーと直接連携しプロダクト開発に携わることで、コミュニケーションの取り方や考え方の違いなど多くの面で新たな発見が得られると思います。 また、ベトナムならではの社内イベントも多数開催しているため、ベトナム文化の中で働きたいと考える方にとっても魅力的に感じていただけると思います。
そして、グローバル開発を推進する中で、国や所属する開発拠点にとらわれない関わり方を目指し、幅広い領域や役割を担う機会を生み出していきます。 幅広い経験が得られる機会の中から、一人一人に合ったキャリアパスを実現するための支援も行なっていきます。
今回紹介したグローバル開発に共感いただき、同じ志のもと挑戦したいと感じて下さった方がいらっしゃいましたらぜひともご応募お待ちしています! hrmos.co hrmos.co lifull-tech.vn lifull-tech.my