Apple原理主義者の大坪です。
iPhoneはこれまで毎年新しいモデル(新しさの度合いは様々ですが)が発表されてきました。というわけで毎年新モデルが発表された直後から「次のモデルは」という噂が出始めるわけです。
Appleが新しい製品に対して非常に厳しい秘密保持を行っていることはよく知られています。しかし末端の部品サプライヤまでその厳しさを徹底させることはどうやら不可能らしい。新しい機種の発表が近づくにつれ様々な部品がリークされ、実際の発表日までにはほとんどその外観が判明します。
さて、例年のサイクルによれば秋に発表があるはずのiPhone6ですが、かなり早い段階から「今度のiPhoneは画面が大きくなる」という噂がでていました。(加えて「2種類の画面サイズがある」という情報もありますが、それはさておき)
スマートフォンとか携帯電話の記事、あるいは噂を見ると「最近は大画面化がトレンドだ」というあたかも「バスに乗り遅れるな」といった論調を見かけることもあります。例えば横軸に年代、縦軸に画面サイズをプロットして、適当に「トレンドを示す直線」を引き「次のモデルの画面サイズはこのあたりが適当」とかやっている会社も世の中にはあるのかもしれない。しかしApple原理主義者として、Appleはそんなサイズの決め方はしない、と信じたい。
では
仮にAppleが画面サイズを大きくするとして、どのようなアプローチがあるか。9 to 5 Macのこちらの記事及びコメント欄で活発な議論がなされています。
私なりに論点を整理しますと
仮にiPhone6の画面が物理的に大型になった場合、ソフトウェアの面から見ると以下の2つのアプローチが考えられます。
アプローチ1:画面の画素数は同じままにする。(つまり一画素のサイズが画面サイズに合わせて大きくなる)
アプローチ2:画面のサイズ拡大に応じて、画素数も多くする。
記事の著者によれば、アプローチ1を採用し、画素数そのままで画面サイズを5インチに拡大したとしてもRetina(つまり肉眼で個々のピクセルが見えないくらいの解像度ということ)と名乗るにふわさしい画面の細かさが維持できるとのこと。この場合アプリ開発者は「ちょっと画面が大きくなるだけで何もかわんないもんね」と枕を高くして眠れるわけです。
しかし
その場合、「なーんとなく引き伸ばした」ということにもなりかねず、そもそも何のための画面大型化か、という問題がでてくる。というわけで例えば一平方インチあたりの画素密度は同じで画面サイズを大きくし、そのぶん画素数も大きくするアプローチ2が説得力を持ってくるわけです。
ただし
この場合悲鳴を上げるのは開発者です。320X480という画素数で平和に暮らしていた時代はRetina の登場で揺さぶられ、まだ大丈夫だ、大きいイメージだけ用意すればいいじゃないかと思っていた開発者はiPhone5の登場で「ぎゃっ」となったわけです。320X568ってなんだよ。画素数が変わるだけじゃなく画面の縦横比が変わっちゃうじゃないか。とかなんとか文句を言いながらも結局対応せざるを得ない。
さてAppleはどちらのアプローチを選択するでしょうか?
これに対してはいろいろな立場のコメントがあり
【スペック原理主義者】5インチサイズで4Kディスプレイが必要だ!
→この意見に対しては
・AppleはSpec競争にこだわったことはない
・価格とかバッテリとかどうすんだ
といった反論がでています。
【現実的な開発者】AppleはiPhone5で一度開発者を「ぎゃっ」と言わせたからもう一回それが起こっても驚かないよ。もうAutolayout対応すませたもんね。(Autolayoutという仕組みを使ってアプリを作ると、画面サイズが変わっても「ある程度」自動で対応してくれるのです)
【冷静な開発者】iOS7からは、画面遷移した後戻る操作を行うのに、画面上部の「戻る」ボタンを押さなくても画面を左端からスワイプするだけで可能になっている。これはさらなる大画面化を見越した機能追加だったのではないか。(つまり画面上部に指が届かなくても大丈夫なように)
【冷静で現実的な開発者】画面サイズ変わっても、縦横比が変わらなければそんなにひどいことにならないんじゃないかな…
【小画面原理主義者】iPhoneの良さは画面がコンパクトなところだ。大きくするならAndroidに替えるぞ。
【大画面原理主義者】iPhoneの悪い点は画面が小さすぎるところだ。大きくしないならAndroidに替えるぞ。
【そもそも論】いや、問題は画面サイズではなくバッテリ持続時間じゃね?大きくして例えば12時間バッテリが持つようになればそうする意味があると思うけど。
というわけで
プログラムを開発する立場としては、画面拡大に伴って画素数の変更アナウンスがでても心臓発作を起こすこと無く冷静に受け止める必要がある、と悟るわけです。多くの人が忘れているかもしれませんが、ガラケー全盛期には、Docomoのケータイだけとってみても、それはそれはものすごい数の画面サイズが存在しており、縦横比すらとっても様々だったわけです。あれに対応する事を考えれば、iPhoneの画面サイズのバリエーションなんて可愛いもんさ(涙をそっとふく)
またこんな意見もあります。
【自称クレージーなアイディア】6月のWWDCで新画面サイズ+新画素数だけアナウンスだ。そうすれば秋に新画面サイズのiPhoneが発売されたときにアプリが対応できる!
クレージーと自称してはいるものの、ここらへんが正解かもなあとも思えます。とはいえひょっとすると今年は「新型iPhone」は脇役かもしれない。以前からTim Cookは「2014年には新しい製品を投入する」と宣言しており、その発表のインパクトを高めるため、iPhone6は6月に発表してしまって、、、とか想像だけが膨らみます。
いずれにせよ
Appleが画面を大きくするのであれば、それにはちゃんとした理由があるはず。そもそも何故大画面化する必要があるのか?それに対して「トレンドだから」という馬鹿げた理由ではない、ちゃんとした答えを出してくることを期待したいものです。それは新しいデザインかもしれず、あるいは新しい使い方の提案かもしれない。意見にもあったように「大画面化の主目的はバッテリ持続時間の向上」というのも(技術的に本当かどうかは別として)理由としては納得できる。
それはたとえばiPhone5Cが単なる「コストダウンのためにプラスチック筐体を使用した」だけのものではなかったように(Apple原理主義者はそういう捉え方をするのです。異論は受付けません)
今はただおとなしく6月だか9月が訪れるのを待ちましょう。Appleがどんな提案をしてくるのかを楽しみにしながら、そしてどんな画素数が飛んできてもくじけないだけの気力と、わかりづらいAutolayoutにも笑顔で対応できる心のゆとりを養いながら。