こんにちは。LIFULLのプロダクトエンジニアリング部の野澤です。エンジニアリングマネージャーをやっています。
LIFULLでは組織構造として部の下に「ユニット」があり、その下に「グループ」がぶら下がっています。 今期からは私はユニット長を拝命し、間接マネジメントを行うようになりました。
マネジメント業務の中でも1on1は部下のモチベーション維持やキャリア形成、戦略理解を促進させるために重要な手法です。
グループ長時代も1on1はやっておりましたが、間接マネジメントをやるにあたり、メンバーからは相談がしにくくなってしまったようで、「特に話したいことはありません」となってしまうことが増えていきました。
そこで改めて1on1を有意義にするためにはどうしたらいいか考えてみました。この記事ではそのための取り組みを紹介できればと思います。
LIFULLでの1on1
1on1は今やいろんな業界や会社で取り入れられていると思います。 LIFULLでは「3つのしごと」について1on1で対話をすることが推奨されています。 「3つのしごと」とは「仕事」、「志事」、「私事」です。
仕事
「仕事」はもっとも分かりやすい1on1のテーマでもあります。 普段行っている仕事で困っていることや感じたことなどをざっくばらんに意見交換します。 なかには技術的にうまく行かなかったことの相談に乗ることもあります。 また、仕事を通して得られた学びや気づき、成長したことなどについても話してもらうことが多いです。 他にも指示した戦略や戦術、目標に対しての質問に答えたり、どうやったらもっとチームがスムーズにコミュニケーションできるようになるかなどといったことについても話します。
業務をスムーズに進められるようにすることや、メンバーの成長を促進するのもマネジメントの役割なので 1on1のなかで課題発見や課題解決をしたり、成長の確認や次の成長のためのアドバイスを行うようにしています。
志事
次に「志事」です。志事は主にキャリアやスキルアップについての話題です。
LIFULLでは「内発的動機づけ」を非常に重要視します。 なぜなら、自分自身がやりたいと思って取り組むのとそうでないのとでは、パフォーマンスに雲泥の差が出るからです。
また、LIFULLでは「利他主義」を社是として掲げ、「常に革進することで、より多くの人々が心からの『安心』と『喜び』を得られる社会の仕組みを創るを経営理念としています。
なので当人が「心からやりたい」と思い、熱中できるような仕事でなければ、社会をあっと言わせるような革進を生み出すことは難しいですし、「指示されたことだけをやっている」ような仕事では、ついつい目の前の作業だけに意識がいってしまい、「人々の心からの『安心』や『喜び』」からかけ離れてしまいます。
なので、時々目線を上げるためにも「本当にやりたいことができていますか」、「理念に対しての仕事ができていますか」という問いかけを行います。
こういった話のなかで、「挑戦したいと思っていることがある」、「違う仕事をやってみたいと思うようになった」のような会話が生まれます。その後、具体的な部署異動や職種変更を検討していきます。
LIFULLでは「キャリア選択制度」があり、半年に一回、自身のキャリアを見直し、配属を希望する部署を申請することができます。必ずしも部署異動が実現される訳ではないですが、日々の1on1を通じてその人のやりがいや将来目指しているものを把握し、より会社の戦略・戦術にフィットするような部署を検討します。
また、そうしたキャリアを実現する上でどういうスキルが必要か、どうやって伸ばしていくことができるかといったことも話し合います。オススメの本やイベントを紹介したり、他部署のメンバーを紹介することもあります。
私事
いわゆる雑談でプライベートな話です。
一緒に働くメンバーと気持ちよく仕事をする上で欠かせないのが、「その人となりを知ること」です。週末どんなことをしたかとか、プライベートで悩んでいること、面白い発見、その他なんでも話します。思いついたことをカジュアルに安心して話せる機会です。
こうした私事についての話を通して、相互理解を深め、信頼関係を構築します。特に新しいメンバーのオンボーディングの際や新しく部署を新設した際はとても大事な会話になると思います。
コロナ禍になり、普段取れるコミュニケーションも限定的になってしまったこともあり、週に30分はこうした1on1をすることにしています。
何に困ったのか
冒頭で「間接マネジメントをやるにあたり、メンバーからの相談もしにくくなってしまったようで」と書いた件です。
1on1では最初に「話したいこと、相談したいこと、困っていることはありますか」と質問することにしています。1on1は基本的にメンバーのための時間で、メンバーが話したいことを優先したいからです。
ですが、ユニット長になってからは「特にありません」となることが多く、一方的に私が質問するような会になってしまったのです。
直接現場のメンバーと話すとなると、彼らにとって私は現場で一緒に働いているわけではないし、彼らはグループ長とも1on1をやっているので、ユニット長にどこまで話していいか、何を話していいか分からなくなってしまったようです。
どう解決したのか
ということで、私は以下の2つを実施しました。
- 1on1の目的を文書化する
- 1on1の使い方を文書化する
1on1の目的を文書化する
ユニット長としてメンバーの仕事、志事、私事の状況を理解することには意味があり目的があります。目的を明確にすることで、「話してもいい」という共通理解を作ることにしました。
例えば
- 「仕事」…ユニット長として、みんなが仕事で最大のパフォーマンスを発揮できるように、困っていることを確認し、解決したい。
- 「志事」…ユニット長として、みんなが満足いくような成長をすることで会社の理念の実現に近づけるように、みんなが心からやりたいと思っている仕事ができているかを確認し、個人のキャリアに合った仕事の可能性を検討できるようにしたい。
- 「私事」…ユニット長として、一緒に働くメンバーとして、お互いに好きなこと、嫌いなこと、嬉しかったこと、困っていることを理解することで、信頼関係を深めたい。
のような感じです。
こうすることでメンバーからは何のために、何を話すべきなのかが明確になります。これを社内ブログで投稿し、誰でも見れるようにしてみました。
1on1の使い方を文書化する
上記だけでも足りるかな、と思ったのですが1on1の活用事例も合わせて掲載してみました。
相談相手 / 壁打ち相手
- 仕事で〇〇しようと思っているんですがどう思いますか?
- 仕事で〇〇に困っているんですがどう思いますか?
- ◯◯さんに困っています
会社や部の方針
- このあいだ総会で言っていた戦略について疑問を持ったので教えてください
- 追加されたり変更された会社のルールや制度について、それらの目的や意図を教えてください
キャリアについて
- この間とある本を読んで(とある人と話して、またはとあるイベントに参加して)、自分はもっと◯◯みたいな仕事がしたいと気づいたのですが、どうやったらそういった仕事の機会をもらうことができるでしょうか?
- どうやったらその仕事ができるようなスキルを身につけることができるでしょうか?
上司へのFB
- この間、野澤さんは◯◯みたいな発言をしていましたが、言い方が適切ではなかったと思います
- もっと他の部署の組織長みたいに具体的なビジョンを示して欲しいです
- もっと公平な評価をして欲しいです
- 今の目標設定に納得がいっていません
- もっとメンバーの仕事を見て欲しいです
- 仕事が多すぎます。もっと優先順位をつけて選択と集中をして欲しいです
上司へのプライベート(?)な質問
- 野澤さんは休日は何やってるんですか?
- 好きな食べものはなんですか?
- 野澤さんのキャリアビジョンについて教えてください
- 野澤さんが20代のときのことを教えてください
- ◯◯のニュース見ました?野澤さんはどう思いますか?
みたいな感じです。
この「上司にとっての1on1の目的」と「活用事例」はいわば、1on1のコンテキストを豊かにするものだと思っています。1on1に対する期待を上司とメンバーとの間ですり合わせる作業です。ルール化すると重たいですが、コンテキストをリッチにしておけば、個々人が自由に考えて話すべきことを考えやすくなります。(この辺は『NO RULES(ノー・ルールズ) 世界一「自由」な会社、NETFLIX』を参考にしてみました)
どうなったのか
実際に話題のバリエーションが広がりました。
上記のブログを投稿した後の1on1では「ユニット長の貴重な時間を私の雑談に費やすのはもったいない」と思っている方がいたことも分かりましたし、「細かな業務や技術的な相談で煩わせたくない」と考えていたメンバーがいたことも分かりました。
特に「1on1の使い方」がメンバーには刺さったらしく、「こういう質問もしていいんだ」という感じたそうです。雑談もバリエーションが広がり、「野澤さんが20代のときのインターネット黎明期ちょっと後のときってウェブの可能性をどう思ってたんですか?」みたいな話も出るようになりました。
1on1は基本的にメンバーのための時間です。メンバーがうまく1on1を活用してもらえるよう意識付けを行っています。こんな感じで日々、エンジニアリングマネージャーとしてのマネジメントを試行錯誤しています。
LIFULLの1on1に関しては、弊社CTOの記事も合わせてご覧ください。
LIFULLでは一緒に働く仲間を募集しています。よろしければこちらも合わせてご覧ください。