こんにちは、グループデータ本部データサイエンスグループの清田です。
5月28日から31日にかけて静岡県浜松市にて開催された人工知能学会全国大会(JSAI 2024)に参加してきました。
LIFULLでは、今年もシルバースポンサーとして協賛しております。
今年は、学会理事および副実行委員長として運営にも関わっていましたので、舞台裏の部分も少しお伝えします!
なお、昨年熊本で開催されたJSAI 2023の様子も書かせていただいています。
過去最多の参加人数とハイブリッド開催のメリット
人工知能学会は、1986年に設立された学術研究団体で、「人工知能(AI)に関する研究の進展と知識の普及を図る」ことを目的としたさまざまな活動を行っています。
この記事でお伝えする全国大会のほか、以下のようなさまざまな事業を行っています。
- 学会誌・論文誌の発行
- 研究会の開催
- 各種セミナーの開催
- 産業界と学術界の連携シンポジウム(SIAI)の開催
今回のJSAI 2024は、約3800名の参加者が集まり、過去最多の参加人数となりました。
現地での熱気から、ChatGPTに端を発する生成AIブームを受け、AIに対する関心がますます高まっていることを肌で感じました。
上のグラフに示されているように、全国大会の参加者数は、コロナ禍によるフルオンライン化を経て、コロナ禍前を超える参加人数となっています。
2020年と2021年は完全オンライン開催でしたが、2022年からは現地会場での開催が復活するとともに、ハイブリッド開催となりました。
グラフを見ると、オンラインで参加できるようになったことで、これまで仕事や家庭の都合などの諸事情で参加できなかった方々が参加者層に加わったように思えます。
また、全国大会では、Zoomによるオンライン参加だけでなく、「録画の後追い再生」など、便利なサービスも提供されています。
オンライン参加の方だけでなく、現地参加の方からも、これらのハイブリッド開催ならではのサービスは非常に好評であることが、アンケートの結果からわかっています。
ハイブリッド開催は、設備や運営スタッフの配置などで大きなコストがかかるものの、ニーズも非常に大きいため、来年以降も継続される方針です。
JSAI 2024におけるダイバーシティ&インクルージョンへの取り組み
人工知能学会全国大会は、毎回多様な分野の方々が参加するイベントであり、実際に参加してみると、非常にダイバーシティの大きなコミュニティであることを肌で感じます。
ただ、参加者の属性についていえば、まだ大きな偏りがあります。
代表的な属性である「性別」について見ると、女性の参加者の割合は15%未満であり、依然として男性の参加者の方が圧倒的に多い状況です。
(人工知能学会の会員比率については、さらに偏りがあり、女性の割合は約6%です)
社会を根本から変革する可能性を持つAI分野のコミュニティには、さまざまなバックグラウンドの人材が集まることが求められます。
もし、AI分野の研究者の属性が、極端に偏ってしまった場合、構築するAIが実社会で活用できないものになってしまう可能性も指摘されています。
私が人工知能学会の編集委員長を担当していた時期に、学会誌2020年9月号にて企画した特集「ダイバーシティとAI研究コミュニティ」でも、この問題を取り上げました。
特集の共同企画者の伊藤貴之先生(お茶の水女子大学)へのインタビュー記事がAINOWに掲載されていますので、もしよろしければぜひご覧ください。
人工知能学会では、この問題への取り組みを進めるため、「多様性・包摂推進委員会」を2023年に設立しました。
委員長の高野雅典さん(サイバーエージェント)が、コミュニティにおける属性の偏りがなぜ起こるかを解説されています。
こうした状況を改善するため、多様性・包摂推進委員会では、以下のような方針を掲げて活動を行っています。
- コミュニティ醸成・支援
- 学会参加者・会員・運営者の啓発
- 制度・慣習に関する課題の共有と解決策の提案
具体的な活動の一つとして、2023年11月に開催された人工知能学会合同研究会2023、および今回のJSAI 2024にて、「女性向けランチ会」を開催しています。
ダイバーシティの課題として挙げられるマイノリティの人々の「ロールモデルの少なさ」、つまり「職業・生き方において参考にする/したい人と出逢う機会が少ない」という問題を改善するため、マイノリティの方々どうしが交流する場を創出することが、このランチ会の目的です。
今回、学会理事として冒頭にご挨拶をしましたが、参加者の方々が交流を心から楽しまれている様子を拝見することができました。
株式会社onerootsの榊原 美穂さんが、参加者として報告記事を投稿されていますので、こちらもぜひご覧ください。
オーガナイズドセッション「不動産とAI」
今回のJSAI 2024では、2017年から2019年まで3回にわたって開催した「不動産とAI」オーガナイズドセッションを、4年ぶりに開催することができました。
今回は、以下のようなテーマで発表募集を行い、応募があった6件の研究発表とパネルディスカッションでプログラムを編成しました。
- 不動産分野への生成AI技術の応用
- 不動産価値の推定
- マルチメディアとしての不動産ビッグデータの活用
- 経済学、建築学、地理学、都市学など、不動産と密接に関連をもつ分野との連携
パネルディスカッションでは以下のようなテーマで、多岐にわたる議論を行いました。
- 生成AIへの期待や課題提起
- 既存ストックの価値を高めるためにAI技術が果たせる役割
- 不動産領域の多様なデータへの要望や課題提起
- 学際である不動産の他業界との関わりについて
来年も、引き続き「不動産とAI」をテーマとしたセッションを企画していく予定です。
ご期待ください!
来年は大阪での開催
来年の全国大会(JSAI 2025)は、EXPO 2025 大阪・関西万博の会期中の大阪で、2025年5月27〜30日に開催を予定しています。
JSAI 2025では、実行委員長という役割で関わる予定です。 大阪・関西万博との連動企画など、より社会に開かれた学会への変革に向けた取り組みを進めてまいります。 参加される皆様に満足していただける全国大会になるよう、微力ながら尽力してまいりますので、皆様どうぞよろしくお願いいたします!
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