こんにちは。おうちハッカーの石田です。
8/8・9につくばで開かれた、ニコニコ学会βのサマーキャンプに行ってきました。 今回はそのレポートをお送りします。
きっかけ
今年初めて、ニコニコ超会議に参加したのですが(そういえばこんなの出展してました。)、そのときに ニコニコ超学会βなるブースをふらっと覗いたところ
NHKだけが受信できないアンテナや、女子大生のにおいの香水、スマホゲームの自動化、眼鏡によって違うものが映るテレビなど、それぞれが所属している機関では研究できないだろうけど、みんなが興味のありそうなことを、持ち合わせた技術や知識で研究した成果がポスター発表されていました。
高い技術力でバカなことを全力でやるのが好きな僕は、
「なにこれ、すごく楽しいんだけれど!!」
と興味を持ち続けていました。
いまいちニコニコ学会βの実態をつかめていなかったのですが、とある知り合いからFacebookでサマーキャンプのお誘いが来ていたので
ニコニコ学会に迫るチャンスだと思い、参加を決めた次第です。
開催まで
場所は、筑波研修センターで行われました。秋葉原までいき、つくばエクスプレスで初つくばです。
参加者は40人ほど。こんな感じの部屋で、開会のあいさつが行われました。
開始~テーマ決め
開会のあいさつ、全員の自己紹介をしたあと、議論をより活発にするため、いろんな分野の権威の研究者からのインプットセミナーがありました。
粒子加速器の話
シュタインズゲートを見たことのある人はおなじみの、大型円型加速器です。 次の日に見学に行く、高エネルギー加速器研究機構の岡田さんがお話ししてくださいました。 加速器といったらロマンです!もうワクワクがとまりません!
つくばにある全周3kmの加速器。デカい・・・
みんなのナノテク
僕はナノテクというと、攻殻機動隊のナノマシンが浮かんできてしまいます。 こちらも翌日に見学に伺う、物質材料研究機構の有賀さんから。
分子を手でつかんで操作できるような研究をしてらっしゃるそうです。スゴイ!
難しいことを難しい方法でやるのではなく、誰でもできるやり方で難しいことをやることに意義があるとのこと。カッコよかったです!
曼荼羅を描くこと
系統と分類を研究されている、進化学者の三中さんから! 世界中の系統図を調べて本を書かれています。 「万物は蒐集の対象である」 「人は生得的に分類者」とのことで、古来より人は集めて分類するのが好きみたい!
食パンを止めるクリップのコレクターが作った系統樹。生物じゃなくとも系統が存在し、系統図が作れてしまう。
こちらは、醤油の入った鯛の入れ物のコレクターが作った、醤油鯛の解剖図。詳しすぎてスゴイ・・・ 最近、醤油鯛を見かけないですね。絶滅危惧種らしいです。
人は古来から物を系統・分類して、図にまとめてきた。昔からインフォグラフィックスは盛んだったみたい。むしろ生物学は途中から系統樹を使い始めた新参者らしい。
リクルートテクノロジーさんのテーマ案
このニコニコ学会βのスポンサーをしているリクルートテクノロジーさんから、会社概要とアンカンファレンスで話すテーマ案の提示。 リクルートとIngressが組んだとしたら? テクノロジーでエロを追及したらどうなるか リモートワークはなぜ普及しないか、就職活動などの案を提示くださり、結果的にいくつか採用となりました。 *1
アンカンファレンスで話すテーマの案だし
インプットが終わったところで、アンカンファレンスで話し合うテーマを決めます。 アンカンファレンスについては、こちらを参考にしてもらえればイメージをつかんでもらいやすいかと思います。
会議じゃない会議?:アンカンファレンス in ニコニコ学会β合宿 | アイデアキャンプ
アンカンファレンスについて - 高専カンファレンス Wiki
インプットセミナーを受けて、自分が話したいことをポストイットに書いて、ホワイトボードにペタペタと貼っていきます。
各自が張ったものを、近いものをまとめて、整理します。 結果、初日に話し合うテーマの一部はこのようになりました。
アンカンファレンス
ここから部屋を3つに分け、自分が話したいテーマの部屋に行って議論に参加します。途中で別のところに移ってもOKだそうです。 25分を1セッションとして、初日に5×3セッション+ナイトセッション、2日目に2×3セッション行われました。 どこも議論が白熱して、25分経っても終わらず、どんどん予定が後ろ倒しに・・・
こちらはナイトセッションで熱く議論してる様子。何を議論したのかは内緒です笑
ここでは、僕が参加したセッション、その他気になったものについてざっくりまとめたいと思います。
リモートワークはなぜ広まらないか
- 業務内容的にできないものがある
- セキュリティの関係で持ち出せない
- 関係者が多い複雑な仕事
- 接待など、人と人とのつながりが大事な仕事
- 内容的にできるものは、なぜできない?
- 情報の伝達が遅い
- 情報量が少ない
- 上記二つは、技術の進歩で解決しそう
- 会ったことがない人だと、意図したことが伝わりづらい
- 海外とリモートで仕事してる人の実感
- 文化が違うと伝わりづらい
- 顔を合わせて話すと、表情や手振りから伝えやすい
- 完全に初めからリモートだと厳しいが、一定期間は一緒に仕事し、リモート移行するのが現実的
ニコニコ学会の今後
- 5年間で終了すると決めていたが、今後どうするか
- 運営の負担が大きく、今の形で続けるのは厳しい
- 期間が決まってるから頑張れた、という感じ
- ニコニコ生放送の準備大変
- ビジネスモデルが作れず、厳しい
- 各地で展開するモデルも難しかった
- 予定通り5年で終了する
- 派生でできた分科会は継続する
- 同窓会という別の形でやるかも
イングレス×リクルート
- イングレスを初めとした、ゲーミフィケーションを用いてリクルートのサービスと連携できないか
- イングレスの面白さは、地図情報とコミュニケーション
- イングレス自警団
- イングレスしながら夜道歩いてると、警察に職質される
- イングレスしながら地域の見回りしたら、犯罪防止にいいのでは?
- 災害時の避難場所を回るミッションを作って、防災に役立てないか
- 商業色が強くなってくると、ユーザーには抵抗感が生まれる
- 伊藤園、ローソンなどがイングレスと提携。店舗や自販機がポータルに
- 商品の2個に1個にシール、イングレスのアイテムに
- ソーシャルゲームのガチャみたいで、嫌な感じ
- 社会問題を解決できるものがよい
- 徘徊老人を移動ポータルにして、みんなで探せばよいのでは
- コミュニケーションに目的意識がある、社会性を持ったゲーミフィケーションのサービスがよさそう
哲学と科学
- 情報技術が発達してきて、最終的にはプライバシーとして何を守るべきなのか
- 保険料の違い
- 地域ごとに事故率違うから保険料違う
- 遺伝的特性で保険料変えるのはなぜダメか?
- 自分では変えられない、生得的なもので区別するのはNG。住所は変えられる
- 保険料の違い
- 哲学は現代で役に立つのか
- 哲学とは? *知の探究の方法
- 昔に確立された論理学が、今のコンピュータの基礎になってる
- 議論をするうえでの共通認識を作るのに重要
恋愛事情
- 結婚精度必要か
- 男性、養わなければいけないという責任感で後ろ向きに
- 女性、養ってもらえる人を選ぶ
- 自由に子づくりできる社会?
- 少子化対策
- 子育てをどうするか
- 暇になったおじいさんおばあさんに子育てしてもらえないか
ライフハック
- エスカレータの片開け問題
- 片側歩行を設計で想定していない
- 社会的弱者が不利益を被る
- エスカレータの設計変更で片側開けができない設計にできないか
- JRで実験してほしい
- エアコンの温度調整
- 大人数の場所で何度に設定するか
- 暑がりの人、寒がりの人、いろいろ
- 空気を読みあってしまう
- 椅子を冷やしたり、ウェアラブル端末で状況を把握できないか
- 見えない何かのために空気を読むより、見える誰かのために考えて行動しよう
見学
アンカンファレンスが終わった後は、みんなで高エネルギー加速器研究機構と物質材料研究機構へ施設見学へ!
高エネルギー加速器研究機構
憧れの加速器見学へ! 加速させる部分の長さが約3kmあり、これだけ大型のものは、スイスにあるCernのLHC(大型ハドロン衝突型加速器)に次いで2番目だそうです。
こちらの加速器を用いた研究で、CP対称性の破れを証明し、2008年に小林誠先生、益川敏英先生がノーベル賞を受賞しました。
こちらが光速の99.999%以上に加速した粒子を衝突させる場所。とても高い設置の精度が求められるようで、地震がおきたら設置しなおすのに2年くらいかかるとか。もう規模がロマンすぎる!
そしてこちらが衝突した粒子が分裂して飛んでいくのを観測する部分。これを先ほどの衝突部に移動させて観測します。 もう2,3ヶ月で設置し終わり、閉じられてしまうので、内部をここまで見られてラッキーでした。
物質材料研究機構
物質材料研究機構では、世界最先端のナノテク研究を行っています。 研究や施設の説明を伺った後で、施設見学をさせていただきました。
分子を操作する設備や
The 研究室
気になった看板。ビジネスでも会話データを取ってみると、コミュニケーションの多い人が成果を残してるというデータもありますね。研究といったら一人で黙々としてるイメージがありますが、周りの人とコミュニケーションをとることが大事なのですね。
行ってみての感想
アンカンファレンスをやる前は、どんなお題が出てくるのか、その場で土台もなく議論を始めて成り立つものなのか、と不安に思っていました。 しかしいざやってみると、さすがは議論することになれている研究者たちだけあって、ちゃんと議論が進んでいきます。
様々な分野の研究をしている人が集まって議論をするので、自分が思っても見なかった考えが飛び出してきて、とても刺激になりました。 社会人になってからは、普段はIT系の人たちとの交流が多く、その最先端の情報ばかりを追い求めていたのですが、今回いろんな分野の人とお話しすることができて、自分の世界や考え方がどんどん小さく、狭くなってきてることに気付かされました。
ナノテクノロジーや理論物理学の最先端、科学哲学といった研究寄りのところから、空気の読み方、Ingressの活用法、恋愛事情といった身近な話題まで、みんな真剣に議論するのはとても楽しかったです。学生時代に持っていた知的好奇心が戻ってきた気がしました。 ある分野について上達するには、そこに資源を集中させることが大事ですが、視野が狭くなりがちなので、気を付けていきたいものです。
またこのような自由で多様性のある人たちとの議論から、柔軟な発想で面白いテーマが生まれ、ニコニコ超学会のような面白い研究成果に繋がっているのだと思います。学会は今年で終わってしまうようですが、なんらかの形で続けていってもらいたいものです。
*1:その数日後、リクルートが在宅勤務が可能になる報道がありました。素晴らしい。