LIFULLのエンジニアの村田です。
私は2018年までLIFULL東京本社で勤務していましたが、現在は北海道の札幌拠点に勤務しています。 当時LIFULLには、全国に営業拠点はあったものの地方開発拠点はありませんでした。私が北海道に移住するタイミングで 札幌の営業拠点に開発拠点を整備することになり、LIFULLにとって初の地方開発拠点が誕生しました。
本エントリーでは、東京に長年勤務していたエンジニアが 地方開発拠点で働くようになって感じたメリット・デメリットおよび、 今後どのような働き方になっていくのか思うことをつらつらと書いていこうと思います。
内容が札幌に限定されている部分も多々ありますが コロナ禍でのリモートワークが普及する中、 地方に移住しようと考えているエンジニアの方に向けて参考になれば幸いです。
地方(札幌)拠点の良いところ
家賃が安い
まず何と言ってもこれ。 都心に比べると、家賃が圧倒的に安いです。 同じ家賃で広い部屋に住める!
私の場合は、3人家族で2Kから3LDKに引っ越しましたが 東京にいた時よりもトータルで家賃が安くなったにも関わらず 広さは2倍近くになりました。
参考までにですが、私が住んでいる行政区の家賃相場と東京23区で 比較的家賃相場が低い足立区と比べてみても
▼ 札幌市豊平区の家賃相場
https://www.homes.co.jp/chintai/hokkaido/sapporo_toyohira-city/price/
▼ 東京都足立区の家賃相場
https://www.homes.co.jp/chintai/tokyo/adachi-city/price/
およそ2倍の家賃の差があります。
リモートワークにおける仕事部屋の確保のしやすさという点では 非常に大きなメリットですね。
上記の例では札幌ですが、他の地方でも都心に比べれば 家賃が下がる可能性は高いはず。
通勤が楽になった
通勤のストレスがまったくないというわけではありませんが、 毎日満員電車に揺られていた頃に比べると、雲泥の差です。
札幌はコンパクトシティで、地下鉄の最寄駅から 中心地さっぽろ駅まで、通勤時間がだいたい10〜15分以内に収まります。
住む場所によっては、自転車で通勤することも十分可能です。
リモートワークであれば、そもそも通勤に関しては問題になりにくいかもしれませんが、 場合によっては出社する必要があるケースも出てくるので 通勤が快適であるに越したことはないですよね。
採用・勤務範囲が広がる
会社の勤務範囲が広がることは会社にとってもメリットになります。 今まではエンジニアの採用は東京勤務が必須であり、本社に通勤できる 範囲のエンジニアしか採用できませんでした。
札幌拠点ができたことで、札幌にいるエンジニアも採用の対象となり、 採用の幅が広がりました。また、北海道出身の社員もLIFULLにはたくさん働いていますので、 彼らが北海道に戻るようなケースがあった場合は 札幌拠点で働き続けるといった選択肢も用意できるようになりました。
その他メリット
エンジニア視点ではありませんが、他にも ご飯が美味しい、子育てに優しい環境、夏それほど暑くない
などなど、総じて言えることはQOLがかなり向上したと思います。
地方(札幌)拠点の気になるところ
勉強会の開催数が少ない。
東京にいた頃は、平日もぎっしり様々な種類の勉強会が行われていましたが 北海道の勉強会の開催数はかなり少ないです。 人口比率からして仕方ないことですが、エンジニアにとっては残念な点になるかと思います。
しかし、コロナ禍で勉強会がオンライン開催されることが多く 札幌にいながらでもこういった勉強会に参加できるようになってきたので この点のデメリットはなくなりつつあります。
情報システム部のサポートが手薄
情報システム部のメンバーが拠点に存在しない場合、 PCのキッティング等は本社の情報システム部門が行ないます。 万が一業務PCが故障した場合、本社から新しいPCが送られてくるまで 業務がまったくできない状態になってしまいます。
また、PCが不調の場合でも本社であれば、直接PCを持ち込むなどして情シスのサポートをすぐに受けられますが それが地方拠点だとできないため、このあたりのケースに備えて 予備のPCをあらかじめ用意しておく等、対策を考えておく必要があります。
冬が厳しい(北海道限定)
一年の半分は寒く、1月〜4月は雪が積もりっぱなしです。 北海道に来た年は、3-4回盛大に雪の上を滑りました。 エンジニアにとって、手は命なので雪で滑って骨折したなんてことにならないよう、 細心の注意を払う必要があります。
在宅勤務の場合は、吹雪にさらされる場面は少なくなるものの 自宅の暖房代がかさんでしまうのが辛いところです。
地方拠点で苦労したこと
私のミッションは、LIFULLの価値創造を加速させるようなエンジニア組織を 札幌拠点でも構築することでした。
本社にエンジニアが集中している中で、1人だけ物理的な場所が離れたオフィスにいる身としては 本社とどうやって連携を取っていけば良いか手探り状態でした。
その中でも特に困った事が、本社との会話におけるコミュニケーションです。
本社の会議に私だけリモートで参加するスタイルになるわけですが、 会議の音声がクリアに拾えるかどうかは会議室の設備に大きく依存します。
高価なマイク設備が設置された会議室であれば、ある程度広い範囲のメンバーの 声をクリアに聞き取れることができます。逆にマイク設備がなくメンバー一人のPCを 利用したミーティングでは、そうはいきません。
ミーティングを行う場所によっては、あらかじめ集音マイクを用意してもらうように 参加メンバーに依頼したりしていました。
設備を揃えたとしても、離れた位置にいるメンバー同士での会話はどうしても把握しづらいなど 体感値として、MTGの内容のうち6〜7割キャッチアップできれば上出来だったのではないでしょうか。
コミュニケーションに苦戦しつつも 私が強く意識していたことは
「この仕事を任せたいけど、メンバーが本社にいないなら無理かも」
といった、判断をされないように実績を積み上げていく事でした。
前例が無い状態で、成功事例を作ることは非常に重要です。
拠点のメンバーでも、本社のメンバーと問題なく連携して仕事を遂行できる ということを証明するため、基本はどのような仕事も引き受けるようにしました。
実績を積み上げることで、開発拠点の可能性を広げ 全国にどんどん開発拠点を展開していくような未来を描きたいと思っていたからです。
最終的には、全国にいるエンジニアが横断でチームを組んで PJを遂行するような働き方を実現したいと思っていました。
コロナになって変わったこと
開発拠点が設立されて1年が過ぎ、新しいメンバーが増え 実績を着実に積み上げている中、ある出来事で状況は一変しました。
そう、コロナです。
コロナによる緊急事態宣言下の中、 LIFULLでは比較的早くリモートワークが導入されました。
これがきっかけで、拠点と本社のコミュニケーションの質が劇的に改善されることになります。
札幌拠点の開発チームは2020年から、東京にいるチームと組んでPJを進めていたのですが コロナ禍以前では、彼らとのやりとりは基本はチャットベースが中心で 週1回の定例MTGで情報共有を行う程度でした。
MTGも回線や設備が悪い状態で音声が聞き取りにくいこともあり、非常にストレスでした。
現在は各メンバーがZoomで常時接続しながら仕事をしており、何かあればすぐにコミュニケーションをとれるようにしています。 画面共有によるペアプロや、オペレーションのダブルチェックといったことも苦労なくできるようになりました。
あれほど苦労していたMTGも、全員が同じ条件でWeb会議システムに参加する形式になったので 参加メンバーの声がききとりやすくなり、MTGの雰囲気も掴みやすくなりました。
拠点も本社もフラットに
今まではどんな工夫を施したとしても本社、拠点という区切りがありました。
物理的な距離が離れた拠点にいる、という事実は消すことができず 何かを判断するにもそこは意識せざるを得ません。
コロナになって、リモートワークが導入されたことで どこで働いているのか、ということはあまり問題ではなくなりました。
本社だからとか、拠点だからとか、地方だからとか、東京だからとか それらに差が生まれなくなり、働く場所における条件がフラットの状態になったのです。
拠点ならではの価値を出す事や、本社とうまく連携するためのノウハウを 溜め込んでいくといった必要性がもやは無くなりました。
こうなってくると、組織の形も変わってくるのではないでしょうか?
今までは同じ拠点の社員で組織を構成せざるを得なかったケースが多いようでしたが 拠点という概念を外して、組織を編成することが容易になりました。 少なくとも、エンジニアのグループをあえて拠点で区切る意味はもう無いように思えます。
日本全国に散らばった「働きたい場所で働くエンジニア」同士が チームを組んで、リモートでコミュニケーションをとりながら 仕事を進めていけるような、私が目指していた遠い未来にぐっと近づきました。
まとめ
コロナによる新しい生活様式が確立され、リモートワークが広がりつつある今、 物理的な場所に縛られず働くことが可能になってきました。
地方拠点においても、リモートワーク浸透により 本社との連携が劇的に改善されるなど、今までのデメリットが改善され より生産性を上げて仕事ができるようになりました。
選択肢がぐっと広まったこの機会に、自身の働き方を見直してみても良いかもしれません。
何はともあれ、北海道はいいところです。